news_gaijinpot-15

 

鵜野澤氏のデザイナーとしての経歴は、異彩を放っている。これまでの経験や得たデザインテクニックなどは、

有名なデザインスクールや高額な海外でのインターンなどで得られるものではない。

世界的デザイナーとしてMoMAにデザインを提供するに至るまでには、子供の頃からの夢を追いかけただけではなく、

偶然が重なるユニークでドラマチックなストーリーがあった。

 

このストーリーは船の上から始まる。

17歳。毎日淡々と過ぎる学生生活に意味が見いだせず、高校を中退し歌手、俳優を目指して家を飛び出した。

偶然にも辿り着いた東京・浜松町の竹芝に停泊している客船で、掃除や荷物運びの仕事をすることになった。

そこで、ゆっくりと流れる時間のなか、いつも傍にあった鉛筆とメモ帳に絵を描き始めた。

「身近にある物を描いていました。船からの景色や、働く人、

デッキブラシやモップなど目に映るものすべてが絵のモチーフでした。」

日々の生活を見つめ描き続けることから絵は生まれた。

ある日、手元に溜まっていく絵を見つめていた時、自身の絵を雑誌社に売り込もうと決意する。

大手の出版社から最先端のアートやファッション雑誌まで、規模に関わらず様々な出版社に絵を送った。

ほぼ全て門前払いだったが、ある日ある人物が面会してくれることになった。

その人物との出会いがデザイナーとしてスタートする1つのターニングポイントになった。

 

news_gaijinpot-16

【隠れていた才能】

「やっと当時のマリークレールジャパンの編集長が会ってくれました。絵を見て彼は僕に言いました。

これではプロのイラストレーターにはなれない…

世界を広げて自身の才能を確認する為にグラフィックデザインを始めてみたら?と。

そして彼は僕に初めての仕事を見つけてくれました。」

その仕事とは、大手広告会社である電通との仕事。

最初の事務所でJR東日本などの大企業の広告に携わり数々の経験を積むこととなった。

 

【アメリカApple社のガレージで】

数々の大手企業との仕事の経験がSteve Jobs氏率いるApple社との仕事に繋がる。

当時、Apple社は日本でのテストマーケティングを行うため、プロモーション方法を検討していた。

プロジェクトのアートディレクター、コピーライターと共に鵜野澤氏は詳細を把握するために

カリフォルニアにあるApple創業の地へ足を運び、Jobs氏と面会することになった。

「ミーティングはかの有名なガレージの事務所で行われました。

数多くの機械に囲まれた部屋で数名の従業員とSteve Jobs氏に会いました。

Jobs氏からApple社のコンセプト、日本市場へ向けた想いや計画を聞き、

彼らがこれからどんな世界・どんな未来を創ろうとしているのかを想像すると、

信じられないほど刺激的な時間でした。」

 

news_gaijinpot-17

 

20歳。

師匠となるデザイナーの指導を受けながらも、わずか20歳で、

米国のテレビ局CBS出身のアートディレクターと

コムデギャルソンの仕事に携わるなど、更に作品・経験に磨きをかけることになる。

 

23歳。

鵜野澤氏は独立を決意する。

 

デザイナーとしては思いがけないスタートのように見えるが、

鵜野澤氏は常に出会いやタイミングを自ら掴んできた。

また、作品にはデザインを通して日常が楽しくなるように遊び心がちりばめられている。

例えば、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で毎年発売されるクリスマスカードは、

一見個性的に見えるが実はシンプルであり、主役はあくまでもメッセージであるように

デザインされている。

 

英国のヴァージン・アトランティック航空のグッズデザインには、

旅の道中もクスッと笑えるエッセンスを含ませ、

川崎市のロゴには、よく見ると分かる隠れたサプライズを忍ばせている。

「デザインとは人々を幸せにすることだと思っています。仕事も含めて人生を、

日常を楽しんで欲しいです。」

 

news_gaijinpot-18

 

【新しいステージの幕開け】

あるパーティでの出会いが鵜野澤氏の新しいステージの幕開けとなる。

日本のワンダーランド、日本の隠れた魅力を伝える商品とお店を展開するブランド

「のレン」との出会いである。

「のレン」が実現したい想いと鵜野澤氏の哲学が共鳴し、大村智則氏が代表を務める

株式会社コラゾンのクリエイティブディレクターとして、

商品、店舗内装、コーポレートサイト、ロゴ、本社内装など、会社の哲学(戦略)を

実現する環境を整える役割を担っている。

「コラゾンと一緒に働き始めた時、大村さんに「一番最初に働く環境を

ブラッシュアップすることからスタートしましょう。」とお伝えしました。

初めてオフィスに伺った時も素敵なオフィスでした。その環境から

もっとクリエイティブなスペースにすることにより、

もっとハッピーなイマジネーションがでるような環境にしたいと考え、

机、椅子、電球、壁、棚すべてを刷新、オフィス全体を改装しました。

日々の働く環境を楽しむようになり、社員が交代で生花を飾ったり、

香りを楽しんだり、オススメの本を社内で共有するようになりました。」

 

news_gaijinpot-19

【デザインと人生哲学】

刺激的なシリコンバレーの仕事と日本のお土産を販売するブランド運営は

一見かけ離れているように誰もが思うだろう。

しかし、「のレン」に一歩足を踏み入れると「鵜野澤氏の哲学」と

「伝統と革新が小さな島国で共存している

日本文化の奥深さに焦点を当てたブランド哲学」が共鳴し合い調和していることが分かる。

それぞれのお店は、伝統技術を用いたアート性の高い商品から日常使いの商品まで、

選ぶ楽しさを提供する活気があり、

文字通りワンダーランドな空間だ。一度立ち寄ると、選ぶのが楽しく

ついつい長居してしまいそうである。

「来店したお客様を楽しませたいという思いがあります。

お土産選びは、贈り手の思いが込められる時間だからこそ、

空間と時間を楽しんでもらいたいです。」

 

news_gaijinpot-20

 

Apple社との類似点は明確である。商品を通してお客様に「発見」、「心地よさ」、

「驚き」、「感動」などの体験を提供することだ。

この言葉を体現するようにコラゾン社と初めて作った商品は、「雨の日も楽しく」を

コンセプトに、濡れた傘を収納出来るカラフルな傘ケースだった。

「常に人々が日常を楽しめることが重要だと考えています。

人々が小さな幸せや遊び心に気づき、日常を豊かに過ごせるようにしたいです。」

お土産は、鵜野澤氏の哲学を表現する一つの媒体とも言える。なぜならお土産は、

旅先から日常生活に戻った後でも、

旅の思い出や記憶を呼び起こさせてくれる。贈り手も貰い手もお土産を通して、

大切な人を思い、人生そのものが贈り物であることに気付くこともあるだろう。

鵜野澤氏の一番好きな商品を尋ねると、伝統的且つ時代を超えて

愛されるシンプルなデザインを選んだ。

「一つを選ぶのは難しいけど、夫婦箸が好きです。どの商品にも言えることですが、

伝統的なコンセプトには、今も昔も変わらない普遍的な美や要素が含まれています。

例えば、夫婦箸に描かれている扇の柄の意味には、永遠の幸せを願う意味が

込められており、結婚や還暦などのお祝いのギフトとしても選ばれます。

商品や絵柄をデザインする際には、柄やデザインに込められた意味を踏まえ、

どんな人がどんな思いで選ばれるかを考えています。」

 

news_gaijinpot-21

 

 

news_gaijinpot-22

インタビュアー:レベッカ・クイン(株式会社ジープラス・メディア)